akTAR.'s Blog

マイヤーの関係

投稿日:2025/5/26

この記事で示すこと

 マイヤーの関係を導出する。導出自体は2年生の頃に何回もやっているはずなんだけど、この前改めてやろうとしたら忘れていたので、式変形のモチベーションも含めて一度きちんと言語化しておく。

 テストのために詰め込んだだけだから忘れるんだよ。ひどいひどい。

導出

 熱力学第一法則

dU=dQ+dW,\begin{align} \dd{U} = \dp{Q} + \dp{W}, \end{align}

平衡熱力学の基本式

dU=TdSPdV,\begin{align} \dd{U} = T \dd{S} - P \dd{V}, \end{align}

理想気体の状態方程式

PV=nRT,\begin{align} PV = nRT, \end{align}

は既知とする。

 定積モル比熱 CVC_V は「体積一定のときに1モルの物質の温度を1K上昇させるために必要な熱量」、定圧モル比熱 CPC_P は「圧力一定のときに1モルの物質の温度を1K上昇させるために必要な熱量」である。これを式で表すと、

CV1n(dQdT)VCP1n(dQdT)P.\begin{aligned} C_V &\equiv \frac{1}{n}\pqty{\frac{\dp{Q}}{\dd{T}}}_{V} \\ C_P &\equiv \frac{1}{n}\pqty{\frac{\dp{Q}}{\dd{T}}}_{P}. \end{aligned}

また、体積一定のとき、熱力学第一法則より dU=dQ\dd{U} = \dp{Q} であるから、

CV=1n(dUdT)V.C_V = \frac{1}{n}\pqty{\frac{\dd{U}}{\dd{T}}}_{V}.

 ここから CVC_VCPC_P の関係を導出したい。 CVC_V の方は dQ\dp{Q} を使わない綺麗な式で書けているので、CPC_P の式変形を進めていきたい気持ちになる。

 dQ=TdS\dp{Q} = T \dd{S} を代入しても新しい文字がでてくるだけなので、熱力学第一法則を使っていこう。

dQ=dUdW=dU+PdV.\begin{aligned} \dp{Q} &= \dd{U} - \dp{W} \\ &= \dd{U} + P \dd{V}. \end{aligned}

 上式を dT\dd{T}nn で割って圧力一定の条件を課すと、左辺は定圧モル比熱 CPC_P になる。あとは右辺に CVC_V が出てくれば良い。 CVC_V の式を思い出すと、 UU の独立変数を (T,V)(T, V) とすれば、1

dU=(UT)VdT+(UV)TdV=CVdT+(UV)TdV.\begin{aligned} \dd{U} &= \pqty{\pdv{U}{T}}_{V} \dd{T} + \pqty{\pdv{U}{V}}_{T} \dd{V} \\ &= C_V \dd{T} + \pqty{\pdv{U}{V}}_{T} \dd{V}. \end{aligned}

これで右辺に CVC_V が出てきた。 まとめると、

CP=CV+1n{(UV)T+P}dV.\begin{align} C_P = C_V + \frac{1}{n}\qty{\pqty{\pdv{U}{V}}_{T} + P} \dd{V}. \end{align}

 あとは (UV)T\pqty{\pdv{U}{V}}_{T} を消せれば( UU を含まない形に出来れば)良い。2

 偏微分係数を消したり置き換えたりしたいときは、Maxwellの関係式を使うのが相場だろう。

dU=(UT)VdT+(UV)TdVdS=(ST)VdT+(SV)TdV.\begin{aligned} \dd{U} &= \pqty{\pdv{U}{T}}_{V} \dd{T} + \pqty{\pdv{U}{V}}_{T} \dd{V} \\ \dd{S} &= \pqty{\pdv{S}{T}}_{V} \dd{T} + \pqty{\pdv{S}{V}}_{T} \dd{V}. \end{aligned}

これらを(2)式に代入して係数を比較すると、

(UT)V=T(ST)V(UV)T=T(SV)TP.\begin{aligned} \pqty{\pdv{U}{T}}_{V} &= T \pqty{\pdv{S}{T}}_{V} \\ \pqty{\pdv{U}{V}}_{T} &= T \pqty{\pdv{S}{V}}_{T} - P. \end{aligned}

さらに、2UTV=2UVT\frac{\partial^2 U}{\partial T \partial V} = \frac{\partial^2 U}{\partial V \partial T} であるから、

V(UT)V=T(UV)TV(TST)=T(TSVP)T2SVT=T2STV+SVPT(SV)T=(PT)V.\begin{aligned} \pdv{}{V} \pqty{\pdv{U}{T}}_{V} &= \pdv{}{T} \pqty{\pdv{U}{V}}_{T} \\ \pdv{}{V} \pqty{T \pdv{S}{T}} &= \pdv{}{T} \pqty{T \pdv{S}{V} - P} \\ T \frac{\partial^2 S}{\partial V \partial T} &= T \frac{\partial^2 S}{\partial T \partial V} + \pdv{S}{V} - \pdv{P}{T} \\ \pqty{\pdv{S}{V}}_{T} &= \pqty{\pdv{P}{T}}_{V} . \end{aligned}

したがって、

(UV)T=T(PT)VP.\pqty{\pdv{U}{V}}_{T} = T \pqty{\pdv{P}{T}}_{V} - P.

 これを(4)式に代入すると、

CP=CV+Tn(PT)V(VT)P.\begin{align} C_P = C_V + \frac{T}{n} \pqty{\pdv{P}{T}}_{V} \pqty{\pdv{V}{T}}_{P}. \end{align}

 あとは状態方程式から

(PT)V=nRV(VT)P=nRP\begin{aligned} \pqty{\pdv{P}{T}}_{V} &= \frac{nR}{V} \\ \pqty{\pdv{V}{T}}_{P} &= \frac{nR}{P} \end{aligned}

を代入して、最終的にマイヤーの関係

CP=CV+RC_P = C_V + R

が得られる。なお、(5)式までは理想気体に限らず成り立つことに注意。

おわり

 一つ一つの操作の意味やモチベーションをちゃんと言語化しようね(自戒)。

Footnotes

  1. 独立変数に VV を選ぶのは、代入したい式に PdVP \dd{V} が含まれているから。

  2. 前提として「理想気体の内部エネルギーは温度にのみ依存して体積には依存しない」と言われていれば、ここで試合終了(黄色い本の例題)。